煌めいて初恋

「あ、貝原」


恵が即座に反応した。
楓はそんな恵の声にくすりと笑いつつ、同じように後ろを振り向いた。


「大変だったなあ、芸能人の……なんだっけ?」


「鬼島昴?」


「そうそう」


凪はポンと浅黒い手を叩いて頷いた。
キリッとした濃い顔立ちの彼は、なかなかの顔立ちをしている。性格もクールで頭も良く、男女問わず人気がある。



「ていうかその話、聞き飽きるくらい聞いたよ。ほんと大変だった……。ね、楓」


恵は言葉とは裏腹に、少し声を弾ませている。


「そうそう。私、隣だから四六時中見られてる気がしてるくらいだったー」


楓は鷹揚に頷き、自嘲気味に笑った。


「困ったらなんか言えよー」


凪はそれだけ言って、走り去っていった。
< 10 / 134 >

この作品をシェア

pagetop