煌めいて初恋
「はあ……ー」
姫李の姿が見えなくなると、一気に体の力がぬけてしまった。
楓は誰もいない校舎裏の冷たい地面に腰を下ろした。
にしても、鬼島昴と関わるだけでこうも周りの目が変わるのか。
姫李の事は噂には聞いていた。
ものすごい美人で、小学校、いや幼稚園の頃からこの町の「小町」と呼ばれていたのだ。
おまけに両親は資産家だとか、元モデルとからしい。
でもきっと、彼女は元々持っているものに満足しないで、自分を磨いている。
あの綺麗な肌や髪、スタイルがそれを象徴しているのだろう。
きっと、昴と釣り合うのはそういう子だ。
姫李が言うように、私みたいに惨めで、臆病で、弱い人間が。
強くて真っ直ぐな昴に釣り合うはずがないのだ。
自惚れてはいけない。
今のうちに、恋と自覚する前に、彼から離れないといけない。
そうじゃないと、きっと私はまた傷付いて、今度こそ立ち直れなくなる。
ぐっと、唇を噛みしめた。
「白波さんッ!」
低音の、心地よい声。
胸がざわつく、甘くて苦い声。
その声は私を離してはくれない。
「……鬼島……くん」
色素の薄い柔らかい髪を揺らして。
汗を滴らせるほど、息を切らせて。
「なんで?……」
どうして今、ここに現れるの?
あなたのことなんて、好きになるつもりないのに……
「春田さんから聞いた。ごめん、大丈夫?」