煌めいて初恋
そう訊くと、恵は顔を上げた。
彼女は何を考えているのか、難しい顔をして首を振った。
「ううん、それじゃダメなの。好きな人に拒絶されることが一番のダメージになると思うから。いい?こんなこと言うのもあれだけど、楓がこんな風になったのは鬼島くんと関わったからなんだからね。あなたのせいで楓がまた心を閉ざすようなことにでもなったら、私はあなたを一生恨むから」
また、心を閉ざす、か。
白波楓がヴァイオリンを人前で弾けないのと何か関係があるのだろうか。
昴は思考の波に入りかけていたが、恵の声で呼び戻された。
「とにかくっ!校舎裏の方に向かって行ったから、行くだけ行ってみて。お願い!」
恵に何度も手を合わせてお願いをされた。
だが、そんなことをされなくても、楓のことは助けに行く。
どうしてなのかは分からない。
だけど、どうしても白波楓のことを放っておきたくないと思う。
気がついたら、走り出していた。
彼女を助ける為に、傷付かせない為に。
こんなこと、面倒だ。
だけど、彼女の恥じらうような笑顔や豊かな表情がちらちらと現れては消えて、無視することを許してくれない。
こんなこと、初めてだ。