煌めいて初恋

「ああ、クソッ!」


誤算だ。大誤算だ。


校舎裏の方向に廊下を走っていると、この学校では一際目を引く美人でスタイルの良い女子が、たくさんの女子を引き連れて歩いているのを見つけた。


定かではないが、この彼女に何度か話しかけられた気がする。それに、錦川姫李と名乗っていた気がする。
不必要に人と関わるのは面倒だと思っていたが、人との関わりもアイドル活動の一環と思って仕方なく愛想良く接しているつもりだ。


「ねえ、ちょっとそこの君たち!」


昴は歩いて来る彼女たちに声を掛けた。


すると錦川姫李らしき彼女の周りの女子たちが色めき出した。


「やだ見て、鬼島昴くんよ!」
「ああ、やっぱり間近でみると本当にかっこいいわあ」
「姫李さんに会いに来たんじゃない?」


当の錦川姫李は戸惑った表情を見せつつも、嬉しそうに小走りでこちらへやって来た。


「昴くんっ!どうかしたの?」


爛々とした目で見つめてくる。


確かに美人で可愛いと思う。
だが……


「えっと、錦川さん、だよね?単刀直入にきくけど、白波楓さんを見てないかな?」


白波楓、と言うと、彼女の顔が一瞬歪んだ。
その周りの女子たちの顔からもスッと表情が抜け落ちた。


「白波楓?知らないわ、そんな子」


その声はとても冷たかった。


「ねえ、それより昴くん。あたし今日、昴くんと……」


彼女は甘い匂いを漂わせながら昴の腕に自分の腕を絡めてきた。
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