煌めいて初恋
「えっとお……、それは……」
一瞬視線が泳いだ。が、意を決する。
「鬼島くんといると、なんだか自分が自分じゃなくなる気がするの。彼のちょっとした仕草とか、声とか、息遣いに胸がきゅっと苦しくなる。相手にされてないって感じると寂しい。悲しい。彼のことをもっと知りたい」
「恵、これは恋、なのかな……?」
チラリと恵を見ると、恵はうんうんと折れそうなくらいに首を振っていた。
「そうだよ!これは恋、なんだよ!ピュアすぎて泣けてくる!楓、ついに自覚したんだね!」
「じっ、自覚って…。それじゃあ私がずっと鬼島っ…くんのことが無自覚で好きだったみたいじゃん」
顔がかっと熱くなった。
けど、本当は最初から恋に落ちてたのかもしれない。
「少なくとも、今までヴァイオリンにしか興味なかった楓がここまで誰かのことで心乱してるの、初めてじゃん」
「…それはまあ、ね」
そうだ。心が乱れる。彼と出会って、いろんな方向に。
「ってことは、錦川姫李とは関係ないってこと?」
その名前にぴくりと体が反応した。
「えっ…と、」
人を寄せ付けない煌びやかなオーラ。
射抜くような視線。
何もかも、勝てる気がしなかった。
「校舎裏に呼び出されて錦川さんに、鬼島くんに近づかないでって感じに忠告されたんだけど、そのあとすぐに鬼島くんが来てくれて……」