煌めいて初恋

「じゃあいじめられてはない?苦しくなかった?」


「うん。これ以上鬼島くんに近づかなければ多分何もされないと思う」


「そっか。それならいいの。あの人顔は可愛いけど裏ではとんでもないことするからさ。楓にひどいことめちゃくちゃ言ってないか不安で不安で…」


もうこりごりというように、ははっ、と恵は乾いた笑みを漏らした。


「大丈夫だよ。これから鬼島くんと仲良くしすぎるのは控えるし、錦川さんの目に留まることはないと思う」


そう言うと、恵は目を丸くした。


「えぇ!なにそれ!鬼島くんと仲良くするのはやめるってこと?」


「う、うん。そういうことだよ」


恵はあり得ない!と頭を抱えた。


「せっかく恋したんだよ?叶えたくないの?鬼島くんと付き合いたくないの?」


「うん。だって私と鬼島くんじゃ不釣り合いすぎるもん。錦川さんの言うとおりだよ…。
それに相手にもされないって」


楓は自嘲気味に笑った。


「釣り合う釣り合わないって何?恋は釣り合いじゃないと思う。私は恋って相手が自分の特別になって、心を動かされることだと思うよ。だから、楓は楓の頑張り方をすればいいんじゃない?」


恵がこちらを見据えてきた。
恵の言うことは正しい。だけど、それは強い人の言葉だ。


「確かにそうかもしれないけど…。私は…ね、ものすごい臆病で弱いこと言うけど、私は傷付きたくない。頑張って追いつこうとしても追いつけないっていつか分かる瞬間が来るのが怖い。告白でもして振られて拒絶されるのが怖い」


楓はうつむいた。しばらく沈黙が続く。恵は何を言うのだろう。


口から出た言葉があまりに惨めで自分が情けなく思える。
だけど、傷付くのは怖いから。


「いやー、めっちゃ分かる。告白して振られたらどうしようとか、彼から見た自分を想像するだけで怖いもん」


楓が驚いて顔を上げると、恵はいつもと同じ笑顔でほおづえをついていた。
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