煌めいて初恋

しばらく二人で茶化しあっていると、予鈴が鳴った。
下校時間を知らせるチャイムだ。


下校に相応しくない気のするメンデルスゾーンの結婚行進曲。
閑散とした学校に響く壮大な音楽。


それがなんとなく煩わしく思えたり、うれしく思えたりする毎日。だが今日はとてもくすぐったい。


「もう帰んないと!」


帰り支度を始めると、直後、教室のドアが開く音がした。


「貝原っ!」


恵の声が明るく弾む。
振り返ると、部活帰りか、サッカー部のユニフォームに身を包んだ凪がいたのだ。


「おう、なんだよまだいたんだ」


凪は爽やかにこちらへ近づいてきた。


「貝原は部活帰り?っていうか今日、部活オフじゃなかったっけ?」


今日は職員会議で全ての部活がオフになっているはずだ。


「あー、そうなんだけどちょっと自主練しててさ。もうすぐで夏の大会もあるし、エースとして少しでも頑張らないと。弱小サッカー部だけど、いけるとこまでは行きたいし」


凪は2年生ながら本校サッカー部のエースだ。地区大会でも優勝したことがほとんどないくらいの弱小校ではあるが、部内の雰囲気はとても良いと凪はいつも自慢げに話している。


「貝原、いつも頑張ってるもんね。今年は絶対勝てるよ!」
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