煌めいて初恋
やり手の有権者の父は家庭をほっぽり出して、家族のことなど何一つ考えていないように見える。
その一方で母は昴の面倒をよく見、家事も完璧にこなす、非の打ち所のないような女性だ。
しかし父は、その母を連れて海外出張へ行くのだそう。
『もう決まったことだ。この家はしばらく留守にする。帰ってくるなよ』
『でも俺、一人で大丈夫だし』
『ダメだ』
『母さんも何か言ってくれよ』
昴は母に助けを求めたが、母はむしろ、父に同調していた。
『一人なんて危ないじゃない。お爺ちゃんのところに行ってきなさいよ。お爺ちゃん、喜ぶと思うわー。ねえ、あなた?』
『ああ、そうだ』
二人は鷹揚に頷いた。昴は二人に食ってかかろうとしたが、敵うわけもなく、強制送還となったのだった。