煌めいて初恋
昴は結局、荷ほどきをしばらく行い、といっても、荷物が割と多くて半分もやらずに投げ出した。
思いっきり畳に転がり、埃っぽい空気を吸い込んだ、そのとき。
突然、楽器の音がした。
不思議に思い、錆び付いた小さな窓を開けた。
春風に誘われるように、胸の奥にしっとりと染み込んでくるような、暖かい、甘美な音色が入り込んできた。
聞いたことのある曲だった。
甘くて、優しくて、聖母が歌うような美しい音。
ストリングスな音色だから、恐らくヴァイオリンか何かだろう。
そっと目を瞑ると、広くて大きな大草原が浮かぶ。空は青々としていて、どこまでも伸びやか。
聞き惚れてしまった。
誰が弾いているのかも分からないのに、ただその音だけに、身を任せていたくなった。
昴の胸中に渦巻いていた黒いものが浄化され、泡となって消えていくような気がしていた。