煌めいて初恋
それから数日。
部屋の片付けで春休みのほとんどを使い果たした昴は、重い足取りで今日から転入する学校へ向かって行った。
あの日から、毎日のようにヴァイオリンの音がする。
聞いたことのある曲が不規則にループしていて、朝からずっと聞こえることもあれば、夕方にちょっとだけ聞こえることもある。
しかしそれは、毎日のように聞こえてきており、昴の好奇心を揺さぶり続けていた。
聞こえてくる方向に歩いて行ったこともあるが、山続きで迷子になってしまった。
運良く祖父に見つけてもらえたが、無言で頭をはたかれた。
なので以降、これ以上の詮索は危険だとみなし、追いかけるのはやめた。
もしこの学校に弾いている人がいればな、なんて思いながら、春休みが終わるのを待っていた。
『にしても、この坂きっつ…』