煌めいて初恋

楓は困ってしまった。
楓にとってあの場所は、楓しか知らない、楓だけの秘密の場所だからだ。あの場所を教えてしまったら、あの場所は秘密ではなくなる。
楓は自分の秘密を人に教えてしまえば、なにかが変わってしまう気がしてならなかった。


楓は少し考えてから、昴に質問を返した。


「どうしてそんなこと知りたいの?」


すると昴は一息置いて話し出した。


「実はいつもヴァイオリンの音がするんだ。
時間は不定期で毎日。だからちょっと気になって」


「え…そうだったんだ」


楓は思ったより深刻な話ではないと分かり、肩の荷を下ろした。
しかし、聴こえている音はきっと楓の音だ。


「ごめん、迷惑だよね。それ多分私の音だと思うから」
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