煌めいて初恋

楓が謝ると、昴は「いや…」と否定した。


「凄くいい音っていうか、なんて言うか……。でもとにかく、迷惑なわけじゃないから。これからも気にしないで弾いてほしい」


昴は少し言葉に迷っているかのようだった。しかし楓はほっとしていた。楓の弾く音を苦だと思ってもらえていないだけで嬉しくて、心の励みになったからだ。


「ありがとう!そうやって思えてもらえるだけで凄く嬉しい」


楓が感謝の意を伝えると、昴は少し照れたようにそっぽを向いていた。


「いや……。じゃあそれだけだから。また明日」


昴は早口でそう言うと、楓を追い越して行った。


「鬼島くん!!」


楓は昴を呼び止めた。


「また明日ね」


昴は一瞬止まってこちらを振り向くと、整った顔立ちをほころばせて去って行った。
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