煌めいて初恋

その日も楓は、朝からいつもの場所でヴァイオリンを弾いていた。


アメイジング・グレイス
タイスの瞑想曲
G線上のアリア…


いつも弾く曲が、広い森にヴァイオリンの音が響く。
楓はしばらく弾いたのち、ヴァイオリンをケースにしまった。
しかしその時だった。


「白波さん?」


楓しかいないはずの森に声が響く。


「!?」


思わず楓は周りを見渡した。


「鬼島くん!?」


森の端に、昴が立っていたのだ。
楓は固まり、目を瞬かせた。そんな楓に構うことなく、昴は楓の方へやってきた。


「ど…どうし…て?」


「やっぱり弾いてたの、白波さんだったんだ。」


昴は呑気にそんなことを言った。


「そう言うことじゃなくって…」
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