煌めいて初恋
曖昧に答えると恵はまた、肩を下げた。
「はっきりしないね…。柄本先生だっけ?最近会ってるの?」
その名に少しドキリとした。
「ううん。あれから一度も会ってない」
出来るだけ動揺を悟られないように、平然を装った。
「そう…」
恵はそれだけ呟いた。
恵も困らせてしまった…
楓は再びため息を吐いた。
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴り響いた。
「あっ、もうこんな時間!部活行かないと!」
恵は焦りながらガタガタと席を立った。
「あれ、今日も部活?」
楓はふと体を起こした。
「うんそう。今日は大会に出る人だけなんだけどね。あっ!楓に報告してなかったけど、今日帰り、貝原と一緒に帰るんだー」
恵は心底嬉しそうにして言った。
「へえ!それはよかったじゃん!ラブラブだねー」
楓がそう言うと、恵は嬉しそうに「そんなことないって!」と頭を掻きながら言った。
可愛いな…
いいな…
恵はいつも頑張っている。
それに比べて私はただ、ヴァイオリンに逃げてあの日から一歩も動くことが出来ていない。