煌めいて初恋
「こんなとこで何してんの?」
不意に、思考が寸断された。
そして楓は弾かれたように、勢いよく振り向いた。
「鬼島…くん」
そこには、彼がいた。
昴は、静かにこちらを見下ろしていた。
何か話さなければと思ったけれど、上手く言葉を紡げない。
「その…、今帰るとこ?」
一瞬早く反応したのは昴だった。
「あ…うん」
口から出たのは震えた声だった。
昨日の今日で、流石に普通に接するのは苦しい。
「えと…鬼島くん…も?」
そっと尋ねると、昴は「ああ」と頷いた。
「…白波さん、誰か待ってるの?」
僅かな沈黙を遮るように、昴はそう切り出してきた。
「うっううん!誰も待ってないよ。今から、帰るし…」
苦笑いで返した。
すると昴は感情のない目を楓から逸らして、「そうか」とだけ言ってバンッと傘を開いた。
紺色の傘だった。
けれど、同級生の他の男子たちとは違い傘は皺ひとつついていないし、穴も開いていない。
どこかのブランド品のように上品に見えた。