煌めいて初恋
それはきっと、昴が使っているからだろうけれど。
「何?」
どうやら長く見過ぎてしまっていたようだ。
昴は不思議そうに首を傾げて、こちらをじっと見下ろしていた。
「へうっ⁈あっその…」
返答に困っていると、やがて昴が「ああ」と言った。
「白波さん、傘は?」
どうやら楓の手元を見て、傘がないのに気づいたらしかった。
「えっと…実は忘れてしまって……」
苦笑いをしながら答えると、昴は「じゃあ」と言って楓に自分の持っていた傘を差し出そうとしてきた。
「えっ!?いいよいいよ!傘ないのは仕方ないから、恵に入れてもらうか普通に無しで帰るかって考えてたところだから!気にしないで」
慌てて首を振ると、昴は「そうか?」と首をかしげた。
「視線を感じたからてっきり、傘を貸して欲しいのかと思ったんだけど…」
「ほっほんとにいいから!」
必死で断ったが、それが必死すぎて逆に失礼かなぁ、なんて思いながら、心の中で反省した。
「じゃあ俺、帰るから」
昴は平然としてそう言うと、傘をさして雨の中に入って行った。