煌めいて初恋
「こんなに雨降ってるのに、走って帰るなんて何やってんの?恵さん?を待つんじゃなかったのかよ」
昴は半分責め立てるような口調だ。
鬼島くんも、こんな顔見せるんだ…
楓は少し、昴の意外な一面を見ることができたような気がして、こんなときに失礼だとは思いつつも、心なしか嬉しさを感じた。
「鬼島くん…ありがとう」
楓の口から自然と出てきたのは、昴への感謝の言葉だった。
昴はそれを聞いて少し面食らったように目を瞬かせていた。
「私がさっき走って帰るって言った時、傘差し出してくれた後、何も言わずに帰って行ったじゃない?なのにどうしてこうやって傘差してくれてるの?」
そう聞くと、昴は頬をぽりぽりとかいた。
「だって普通、雨の中を走って帰るなんて有り得ないし。それに白波さん、女の子だし。だからてっきりその恵さん?を待つもんだとばかり思ったんだよ」
「えっ?うそ、普通傘なかったら走って帰るでしょ?」
楓は意外に思って反論した。
「いや、男子ならまだしも…。ていうか普通に風邪引くから」