煌めいて初恋
「あ…」
確かに昴の言う通りだった。
後先考えずにこのまま雨に濡れて帰っていたらきっと、風邪を引いてしまうだろう。
その楓の反応を見て、昴は肩をすくめた。
「白波さん、案外抜けてるんだね」
「あはは……そうかも」
楓と昴は目を見合わせて小さく笑った。
「それじゃあ、帰ろう」
昴は自然な動作で楓の横に立つと、楓の方へ傘を傾けて歩き出した。
「恵さん?には入れてもらわなかったの?」
「えっと…恵はその、好きな人と帰る約束してて…さすがにね、そこに割り込むのは…」
「確かにね」
昴が少しだけ口角を上げたのが横目で分かった。
その後、少しだけ取り留めのない話をした。
傘の中の、二人だけの世界。
とんっとんっ
雨粒の跳ねる音と、昴の声と、その息遣いと、楓の心臓の音だけ。
まるで、世界が二人きりになったかのように、二人のペースで時間が進んでいっている。
そんな気がした。
今なら、大丈夫だ。