煌めいて初恋

昴の声が、楓の言葉を遮った。


「え…」


「私なんか、なんて、どうして言うんだよ?俺、白波さんの演奏聴いてすごく心が優しい気持ちになって、ずっと聴いていたいって思った。だから俺、白波さんのこと、すごく尊敬する。なのになんでそんなに自分のことを卑下するんだよ」


そう言う昴の口調は少しだけ、怒っているような気がした。


昴の言うことにはなぜか説得力がある。
尊敬するなんて言われて、お世辞ではないだろうかとは思うけれど、不思議とそれが100%お世辞だとは思えなかった。


「鬼島くん…」


感極まって声が震えた。
少し、視界が滲んでいる。


「白波さんはもっと、自分の演奏に自信持ちなよ。人前で演奏できない理由はわからないけど、それでも君の弾いてる音楽はきっと、俺の心に白波さんの演奏が届いたように、誰かの心にも届いてるから」


そう言う昴は少しだけ照れ臭そうにしていた。


「ありがとう…」


楓は今日一番の笑顔を昴に向けた。


たとえこの言葉が嘘でも。


鬼島くんのこの言葉がとても嬉しい。


< 56 / 134 >

この作品をシェア

pagetop