煌めいて初恋
言葉一つで、救われる。
雨はまだ降っていたけれど、楓の心は晴れ晴れとしていた。
「ここで大丈夫。ありがとう」
楓は昴のさしていた傘から出た。
あの後、昴は楓を家まで送り届けると言った。
いいよ、と断ったのだが、いや、送ると言って着いて来てくれたのだ。
楓はそのことに大いに戸惑ったが、同時にくすぐったくて、嬉しかった。
その間、途切れ途切れには会話はあったが、少し気まずさを感じてあまり会話が続かなかった。けれど、そのことがあまり苦には感じられなくて、くすぐったいひとときだった。
「白波さん、また明日」
昴は普段より優しげな表情でそう言うと、今来た道を折り返して行った。
「鬼島くん!」
楓は鞄の持ち手をぎゅっと握りしめると、昴を引き留めた。
昴の目をしっかりと見る。
「あのっ、私、絶対鬼島くんの前でヴァイオリン演奏するからっ!今すぐには無理だけど、いつか、絶対。だからっ、待ってて。私の演奏、聴いて」
勇気を出して。
鬼島くんがくれた勇気を、チャンスに変えたい。