煌めいて初恋
「…うん。待ってる」
そんな思いを汲み取ったのだろうか?
昴はふっと笑ってそう言った。
すると、昴の背後から太陽が顔を出した。
その太陽に反射して、水たまりが黄金色に乱反射する。
錯覚だと思うけれど。
昴がとても、輝いて見えた。
楓はそんな昴が眩しく思えて、目を細めた。
と同時に、ドキリと胸が音を立てた。
「白波さん」
しばらく呆然としていた楓は、昴の声にはっとした。
「見て、後ろ」
「え?後ろ?」
昴の指を指した方を追うと、
「わあ!」
青空にくっきりはっきりと、大きな七色の半円が浮かび上がっていた。
「虹!」
楓は思わず、感嘆の声を上げた。
こんなに綺麗な虹を見たのはいつぶりだろう。
小さい頃は雨が上がるたびに外へ出て虹を探したものだ。
そして空にすぅっと現れた虹を見つけては、母や恵に興奮気味に話していた。
けれど、最近は虹を見ることはなくなっていたし、見つけようと思うこともなくなっていっていたのだ。
「雨、止んできた」
昴がふと気付いたように傘を閉じた。
「ほんとだ」
昴の表情を横目で窺うと、今までに見たことのないようなとても優しげな瞳で虹を見つめていた。
鬼島くん、こんな表情もするんだ…
なんだか少し、昴のことを知ることができたような気がして、楓は少し嬉しくなった。