煌めいて初恋
「楓ちゃん、来るの早かったね」
森本のおじいちゃんは楓を居間へ通すと、せっせと動きながらそう言った。
「あっ!そうだった、お母さんから漬物を森本のおじいちゃん家に持っていってって頼まれてたんだ」
突然の昴の登場に驚いて、すっかり漬物ののことを忘れてしまっていた。
「これどうぞ」と言ってタッパーを渡すと、森本のおじいちゃんはにっこり笑って「ありがとう」と言った。
「久美枝ちゃんの漬物、美味しいから毎年楽しみにしておったんじゃよ」
森本のおじいちゃんはそう言って嬉しそうにタッパーを受け取った。
「さ、座ってなさい」と森本のおじいちゃんに言われ、楓は小さなちゃぶ台を挟んで、昴の向かいに正座した。
「鬼島くん、森本のおじいちゃんのお孫さんだったんだね…」
ずっと沈黙も苦しいので、苦笑いをしながらそう話しかけた。
すると昴は、「あ、ああ」とはっきりしない返事を返してきた。
「鬼島くん?大丈夫?」
楓は不思議に思って、眉を潜めて聞いた。
「えっ?ああ、うん。大丈夫。なんかすごい驚いて…」
「驚いてって、それは私が突然来たから?」
そう聞くと、昴は「まあそれもあるんだけど」と言葉を濁して続けた。