煌めいて初恋
「コツがあるんだけど…、こう…手をそっと水の中に入れて、水の流れが変わったと思ったら一気に掴む!…と上手くいくと思うんだけど」
水から一気に手を出すように、手を振り上げる。
ぴちぴちっと魚が水しぶきを上げた様子とリンクした。
「えっ……、まさかっ楓っちできちゃう感じ?」
琉矢が戸惑いの声を上げた。
「ん?できる…けど?一応」
楓は首を傾げた。
「えっ⁈まじ?はっ?うそぉ!!」
琉矢の悲痛な叫び声がこだました。
「白波さん、えっと…ほんと?捕まえられんの?魚を?素手で」
昴も何がそこまで不思議に思ったのか、目を大きく見開いている。
「うん、一応」
こくりと頷くと、昴はさらに目を大きく見開いた。
「ここでは小学生のときに魚手づかみ講座ってのがあるし、年に一度魚手づかみ大会ってのもあるから、ここ育ちの人は一応みんなできるよ?」
全国的にも珍しいことをしているという自負はあるが、そこまで驚くことなのだろうか。
「なら、やって見せて」
昴が言った。
「今っ?」
楓はのけぞった。今からやれと言われても心の準備がなっていない。
「できるんだよね?ならやってみてほしいな」
昴はこちらを挑発するようににやにや笑ってくる。
「でっできるよ?当たり前じゃん!今までやってきてるんだからっ」
煽られると黙ってはいられない。
楓は言うなり立ち上がり、靴を脱いで川の中へ足を踏み入れた。
もう夏が来ているとはいえ、まだまだ川は冷たい。
足元がひんやりとして、思わず身震いをするほどだ。