煌めいて初恋
鬼島くんにとっての「私」はただのクラスメイト。
じゃあ私にとっての「鬼島くん」は?
ただのクラスメイトでしかない。
納得がいくような、そうでないような。
楓の胸にモヤモヤがつかえていった。
夕食を食べ終えたところで琉矢たち3人は帰ることとなった。
「じゃあまた撮影で!」
「楓っち、今度は魚の手掴み教えてね」
「じゃあな」
「こちらこそ遠いところサンキューな」
いつもは少しゾッとする無人駅の黄昏時も、4人がいるだけでまるで映画のワンシーンみたいになる。
3人は誰も乗っていない電車に乗り込み、楓は昴と手を振って見送った。
電車が見えなくなると、一気に周りが静かになったように感じた。肌が急に敏感になったのか、吹く風が冷たくなったようだ。もうすぐで夏至を迎えるということもあり、もう6時を回ってはずだが、まだオレンジ色に光る太陽が暗い夜の訪れを拒んでいる。
「さ、帰ろう。」
昴が歩き出したので、楓もその後を追う。
「今日は一日付き合ってくれてありがとう。男ばっかりだったしごめん。あいつらいい奴ばかりなんだけど、ちょっと曲者なとこあるし… 」
昴が苦笑した。
「ううん。私は楽しかったし、大丈夫だよ。こちらこそ4人水入らずだったのにご馳走してもらっちゃってごめんね」
慌てて首を振った。
「もう結構暗くなったな。危ないし、送るよ」
「そんな…大丈夫だよ。近いし、田舎だから誰にも会わないよ」
家に来られてしまったら、絶対母が騒ぐ。そんなことになったら昴に申し訳ない。
「いや、俺がそうしたいだけだから。食後の散歩したいし、確かじいちゃんが煮物を持っていって欲しいとか言ってたから、荷物持ちとでも思って」