煌めいて初恋
差別に関わったこんな自分でも、神は赦して下さった。神からの恩寵に感謝します。
そして過去に犯した罪は悔い改め、正しく生きよう。
この曲の歌詞を大雑把に言えば、そういう意味だろう。
「へぇ……。」
昴は何か考え込んでいるようだ。
「鬼島くん?」
そっと楓が顔を覗くと、昴はゆっくりと顔を上げた。
「白波さんはさ…、どうしてこの曲が一番好きって思うの?」
え、と口から漏れ出た。
楓はしばらく思案し、言葉を選び取りながら話し始めた。
「この曲を弾いていると、こんな私でも赦されるような気持ちになるの。私は弱いし、臆病だし、自信もない。それでも神様は生かさせてくれる。だから、こんな自分でも生きてる意味があるのかなって思える。いつかこんな自分を赦せる日が来るんじゃないかと思う。答えになってないか…な?」
へへっと笑って照れくささを隠してみる。辺りはすっかり闇が訪れ始め、昴の顔にも闇が落ちて表情が見えづらい。
昴は何を思っただろうか?
昴の言葉をビクビクしながら待つ。
「白波さんは、自分が思ってるよりもきっとずっと強いと思う。白波さんに何があったのか俺にはわからないけど、自分の弱さを自覚して乗り越えようと思ってる白波さんは弱くも臆病でもない。もし神様が本当にいるとするなら、きっと神様はそういう白波さんを見ていて、いつか手を差し伸べてくれると思う」
昴がどんな顔をしているのかは分からなかったが、声はとても優しかった。
「……そうだといいな」
昴の言葉に鼻の奥がツンとする。
「鬼島くん、ありがとう」
もう辺りは真っ暗闇。でも、楓の心には温かい光が差し込んでいる。