煌めいて初恋
「言ったよ。ていうかもう遅いしあんまり引き止めたら迷惑だって」
母をなだめると、昴は苦笑いをしつつ「全然大丈夫だよ」と言った。
「そうだわ、今日編集者さんに大量のお菓子を頂いたの。しかもあの高級和菓子屋、三宝屋のよ!昴君もよかったら食べていかない?」
この期に及んでまだ引き止めるか、この母は。
「ちょっとお母さん」
「あらいいじゃない。昴君のことはあとでちゃんと車で送り届けるし、森本さんにも連絡しておくわよ」
「そういう問題じゃ…」
「家族団欒のところに僕が入り込むのも申し訳ないし、そんな高級菓子頂けませんのでお気持ちだけ受け取らせていただきます」
流石の外用の断り方、こういったあたり、芸能界で人気を博すだけある。
「まあなんて謙虚なこと!いいのよ、うちは楓と二人だからあのお菓子の量を賞味期限内に食べられそうにもなくて、今度森本さんちに持って行こうと思ってたんだから。それに第一子供がそんな遠慮しちゃダメよぉ。お菓子食べれる!やったあ!でいいの」
母はそう言い切ると、昴の返事も聞かないで早々と強引に昴を家の中に連れ込んだ。楓はやれやれ、と肩をすくめその後を追った。