ドイツ人なら良かったのに
あなたの事が好きです
「ドイツであなたの匂いが好きってことは、あなたの事が好きですって意味らしいよ。」
誰かから聞いた事を思い出して、私は初めて
「先生も、私も、ドイツ人なら良かったのに」と思った。
そしたらラフに、挨拶するみたいに先生に告白できるのに。
実際はそんなこと出来るわけないのに、そんなことを考えるくらい私は先生が好きだった。
今思えば馬鹿らしいし、例え自分がドイツ人だったとしてもその意味を知っていたなら言えたはずがない。
ドイツ人の中にもシャイな人と、そうでない人(ラフに告白できる人)がいるはずだ。
そしたら、私は間違いなく前者だし、ましてや奥さんのいる先生に告白なんてするはずない。できるはずない。


高校2年生の春。
先生がうちの高校に赴任してきた。
教室の前のドアから、背をかがめて入ってきた、猫背気味の先生を見た時に「背の高い人だなあ」と思った。
初めに先生に持った印象はこれくらいだった。
その頃の私はそれどころでは無かったのだ。
当時所属していた美術部で上手くいっていなかった。
しかも、私は被害者ではなくあの集団の中では圧倒的に加害者で悪者だった。
元々思った事を割とストレートに相手に伝えてしまう性格だったし、
相手を傷つけるような言葉を選んでしまうようなところがあったから一層。
2年になってもなお、いざこざは続いていて、友達に話しかけられて笑うのがやっとだった。
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