ココロ〜食べなきゃ幸せになれない〜
話していくうちに、楓の目から何故か涙があふれてきた。それを健太郎は優しく拭う。そして、写真を何枚か取り出した。

「楓ちゃん、こんな状態になっても痩せすぎている人が綺麗に見えるかな?」

健太郎が見せてくれた写真は、どれも痩せすぎたせいで病院に入院しなければならなくなった人のものだった。その人たちに笑顔はない。虚な目で点滴を見つめている。中には点滴が外せないよう、拘束されている人の写真まであった。

「……わからない……」

楓がそう言うと、健太郎は「じゃあもしもこのまま楓ちゃんがご飯を食べなかったらどうなるか、絵本を読んであげるね」と言い可愛らしい絵の描かれた絵本を取り出す。そこには、「食べないあなたの一年後」と書かれていた。健太郎はゆっくり読み始める。

「人間が生きていくためには、食べること、眠ること、体を清潔にすること、適度に運動すること、たくさんの大事なことがあります。今日は食べることについてお話ししましょう」

健太郎の呼んでくれている絵本には表紙のような可愛らしい絵が描かれている。楓はまるで保育園に通っていたみたいだな、と笑ってしまった。
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