ドロ痛な恋が甘すぎて

 俺はその日から、必死で歌詞を考えた。

 布団の中でも、授業中でも、雅のノロケ話を聞いている時でも。

 ほのかのことを思いだし。

 言葉を紡いで。

 消して。

 また、ほのかを思い出して。

 レイジに脳を乗っ取られそうになって。

 また言葉を紡いで。

 消して。

 ひたすらその繰り返し。

 

 そして3日後、学校帰りにギターを背負って事務所にあるスタジオにやって来た。


「どう? 歌詞できた?」


「はい」


 マネージャーが俺を一瞥。

 獲物を狙うカラスのようなどす黒い目が光る。


「わざわざオフの日を使ってあんたの歌聞いてあげるんだか、それなりの歌持ってきたんでしょうね?」


「一応……やりきったつもりですけど……」


「ま、聞いてあげるから準備して」


 背負っていたケースを床に置き、ギターを取り出していた時


「あ、ここにいたんだぁ」


 マネージャーに駆け寄った人影が、女の子特有というか、いきすぎな声を発した。
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