ドロ痛な恋が甘すぎて

「苺、あんたも一緒に綾星の歌を聞いて欲しいんだけど」


 は? こいつにも聞かせんの?


「綾星さんの生歌が聞けちゃうんですか? ラッキ~。いちご、聞きたい!聞きたい!」


 苺は膝から下を外側に折り曲げ、アニメみたいに飛び跳ねている。

 だからさ男に媚びるために計算されたその声、やめてくんない?

 聞いてるだけで頭が痛くなる。

 今すぐいなくなって、このスタジオから、来て早々わるいけど。


 あからさまな俺のため息。

 気づいていないのか、気づかないふりをしているのかわからない。

 苺が俺に向ける笑顔は、好意的感情しか含まれていないから余計にイラつく。

 苺はウキウキスキップで俺に近づくと、いきなり俺の手を両手で包み込んだ。


「ダメですか? 綾星さんの歌を聴いたら……」


 なにこの上目遣い……

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