ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

 玄関に行きドアを開ける。


「遅すぎ、ドア開けるの」


「ごめんなさい……」


「ファンに見つかる前に、入れて欲しいんだけど」


 言葉はきつめ。

 なのにニヤケ顔の綾星くん。

 ステージと違い悪魔モードが見え隠れしていて、ホッと安心してしまう自分がいる。


「どうぞ」とリビングに通すと、綾星くんは手に持っていた買い物袋をローテーブルに置いた。

 料理の材料?

 今度は綾星くんが夕飯を作ってくれるって言ってたけど。

 本当に作ってくれるんだ。
 
 嬉しいな、ものすごく。

 買い物袋を見つめ目じりが下がりっぱなしの私に、綾星くんが意地悪な声を発した。


「ほのかに料理作るの、や~めた」


「え?」


「だって自分で作れるだろ?」


「あっ……うん……」


 浮かれていた心を撃ち落とされたような衝撃が、全身に走る。

 そうだよね。

 ライブで疲れてる人に料理作らせるなんて、最低だよね私。

 蒼吾さんの前に付き合っていた人に、よく言われていた。


 『俺は疲れているんだ。料理はお前が作れ』

 『女なんて、会社で大した仕事してないんだから』って。
 
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