ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

 そうだよね。

 私は女だし、男の人に料理なんて作らせちゃダメだよね。

 沈んだ気持ちを誤魔化すよう、できるだけ弾んだ声を出す。


「夕飯、何が良いかなぁ?」


 言い終わった後に残る虚しさと寂しさ。
 
 抱いてしまった負の感情を綾星くんにバレたくなくて、自分の顔に笑顔を塗り重ねるた。


「ハンバーグにする? それとも……」


 それとも……何だろう……


 都合のいい女だった頃の、あの惨めな気持ちが蘇ってきた。


「それとも……カルボナ……」


「ほのかってグラタン好き?」


 え?


「あ……うん」


「じゃあ決まり」


 ちょっと待って。

 グラタンを作ってということ?

 私、作ったことないよ。

 でも、作れないなんて言ったらがっかりされちゃうよね。


「ネットで調べて作ってみる。綾星くんはドロ痛を読んで待っててね」


 はぁぁぁぁ~。

 良い子、気の利く子、相手に合わせる子。

 それってだだの都合がいい女なのに、嫌われたくなくてまたやっちゃった。

 ため息と一緒に、口角も落ちる。


「ほのか、何言ってるわけ?」


 え?
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