ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
 
「何?」


 誰からの電話だろう。


「は? 言ったろ? 今日は無理だって」


 綾星くんの呆れ声が、静かな部屋にこだまする。

 誰かの誘いを断って、ここに来てくれたのかな?

 そうだったら申し訳ないけど、ちょっと嬉しいな。


「何言ってんだよ。勝手に歌詞は変えるな」


 アミュレットの誰かと言い合いしてる?


「わかったから。明日、付き合ってやる」


 『やったあ……』


 え?

 今の……女の子の声?


 かすかにスマホから漏れたスキップボイス。


「弁当なんていらない。何時まで俺を拘束する気だよ!
 ……だから弁当作ってくるなよ。一口も食べないからな、マジで」


 『……』

「わかったから。明日の朝8時な。お前こそ遅れるなよ。じゃあな、苺」


 いちご……


 綾星くんの口からもれた女の子の名前。

 耳に飛び込んだ瞬間、ドロッとした感情の糸が絡まりだしたのが自分で分かった。

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