ドロ痛な恋が甘すぎて
『広瀬と菅沼の会話を聞いたけどさ、まだ、ナマケモノの手のひらがないと寝られないらしいぞ』
『え?』
『蒼吾の手のひら、今でも恋しいんじゃねえの?』
『そんなことあるわけないよ。もう彼氏ができたみたいだし……』
『だってお前、広瀬が寝るまで頬に手を当ててやってたんだろ?』
『そうだけど……』と少しだけ嬉しさを含んだ御曹司の声が、俺の心をぐちゃぐちゃにする。
初めてほのかの部屋に行ったあの日、寝ぼけたほのかに手首を掴まれて頬に当てられたけど。
ナマケモノの抱き枕と間違えたわけじゃなかったんだ。
本当はこの御曹司の手と間違えていたのか。
俺の中で眩しいくらいに輝いていた思い出が、一気に泥水の中に落とされた。