ドロ痛な恋が甘すぎて
「副社長だ!」
「キャー、お疲れ様でーす!」
え……蒼吾さん?
女の子たちのウキウキ声に、固まることしかできない私。
どうしよう。
蒼吾さん、今日はうちの支社で仕事をするのかな?
ずっと蒼吾さんの電話もメールも無視している。
どんな顔を蒼吾さんに向ければいいかわからないよ。
資料室に逃げ込みたい。
でもお昼までに仕上げなきゃいけないプレゼン資料が、できあがっていない。
困惑する私の頭に、嫌みな声が突き刺さった。
「広瀬、できた?」
「え?」
「俺が頼んだプレゼンの資料。まだもらってない!」
イライラ声を私に浴びせてきたのは大野先輩。
え? え?
プレゼンの資料??
「まだ……最終確認が終わっていなくて……」
「は? ノロすぎじゃね?」
「すみません……」
「俺さ今日の10時までってお願いしたよな?」
「昨日は……お昼までにって……」
「言ってねえし、そんなこと。っていうか、自分の仕事がノロいこと自覚してるよな?」
「……はい」
「それなら最低2時間前には終わらせる癖つけろ! 社会人だろーが! 甘えんな!」
「すみませんでした……」
「謝るとかいらないから、今すぐ4部コピーして」
「でもまだ……確認が……」
「間に合わないって言ってんの、確認は俺がする。急げ!」
「はっ、はい!」