ドロ痛な恋が甘すぎて

 プレゼンの資料を大野先輩に渡し終え、ノルマを終わらせることができた。

 お昼休みまでの残り1時間は、特に急ぎの仕事はない。

 ゆったりお仕事ができそう。

 軽く笑みがこぼれた時

「広瀬、今から会議室にコーヒー4つな」

 嫌われているのがはっきりわかる命令口調が飛んできて、私の笑顔を奪いさる。


 大野先輩、もっと優しく言ってくれたらいいのに。

 でも、反発する勇気なんて湧き出てこない。

 私はカップにコーヒーを注ぎ、会議室のドアをノックした。



 え……?


 コーヒーのトレイを片手にドアを開けると、席に座っていたのは男性3人と女性1人。

 その中に蒼吾さんの姿が。


 まずは副社長の蒼吾さんの前にコーヒーを置かなくちゃ。

 誰の顔も見たくなくて、うつむきながら蒼吾さんの前に進む。


「広瀬さん、コーヒーありがとう」


 穏やかな蒼吾さんの声に、びくりと肩が跳ねた。

 でも、返事をする余裕すら私にはない。

 早くこの部屋から出たい一心で、他の人の前にもコーヒーを置く。


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