ドロ痛な恋が甘すぎて
「どうしたの?」
「あっ副社長、なんでもないですから」
慌て声の大野先輩を癒すように、蒼吾さんの陽だまりみたいな声が続く。
「大丈夫? 数字がどうとかって聞こえたよ」
「資料の数字を広瀬が間違えて入力したんです。副社長すみません。資料を作りなおすのに、少し時間をもらえませんか?」
「広瀬さん、間違ってるのってどこ?」
私をまっすぐ見つめる蒼吾さん。
その瞳が優しすぎて、余計に涙がこぼれそうに。
「ここです。2000じゃなくて……200です……」
「なんだ、それだけ?」
え?
「それなら、0を一個消しちゃおっか。俺、修正テープを持っているから」
社内プレゼンだしいいよね?と、にんまり笑顔で大野先輩を見た蒼吾さん。
その笑顔が今度は私に向いた。