ドロ痛な恋が甘すぎて

 苺と肩を並べ夜道を歩く。

 商店街から1本入った、誰も通らないような暗い道を俺の家に向かって進んでいた時、瞳に信じられないものが映り込んできた。


 え?


 なんで壁にへばり付いているわけ?

 苦しそうな瞳で俺を見ているわけ?


「ほのか……」


 音にならないくらいのか細い声が、無意識に俺の口から漏れた。


 会いたかった。

 ほのかに。

 マジで。

 会って確認したかった。

 御曹司とはどうなった?

 付き合うことになったのか?と。


 だんだん近づく、ほのかとの距離。

 俺を無視するかのよう、ほのかはうつむいたまま立ち尽くしている。

 御曹司とのことを聞きたくて。

 それが叶わないなら、ほのかの声だけでいいから俺の耳で感じたい。

 ほのかの元に走り出そうとした時、苺が俺の腕にしがみついてきた。


「お腹すいちゃったねぇ」

 弾んだボールみたいな苺のルンルン声に、俺の脳が冷静さを取り戻していく。

 最悪の未来が脳裏をよぎった。


 ほのかに声をかけたら、苺に弱みを握られる。

 俺が下した結論は、今ここでほのかを無視すること。

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