ドロ痛な恋が甘すぎて

 急いでほのかの表情に目を走らせた。

 泣いていたらどうしよう。

 顔をゆがめるくらい、悲しい表情をしていたらどうしよう。

 そう思ったのに。

 ほのかはゆっくりと顔を上げると、俺に向かってとびきりの笑顔を見せた。

 
「綾星くん、叔母さんに伝えてくれる?」


 キレイに並んだ歯が奥の方まで見えるくらい、ほのかは思いっきり笑っている。


 いとこのフリをしてくれている?


「私ね、前の彼とよりを戻すことにしたの」


 は?


 それって本当の話なのかよ?

 嘘だよな?

 御曹司とまた付き合いだしたわけじゃないよな?


 そう信じたいけど。

 幸せそうに微笑むほのかの顔を見たら、嫌でもわかる。

 ほのかの心を独占している相手は、俺じゃない。

 あの御曹司だ。



「来年に結婚する予定だよって、叔母さんに伝えておいてね。それと……」


「……」


「綾星くんも、彼女さんと仲良くね」
< 138 / 216 >

この作品をシェア

pagetop