ドロ痛な恋が甘すぎて

 ニコニコ微笑んだまま、俺に背を向けたほのか。

 去っていく後姿を、俺は見つめることしかできない。

 大好きな笑顔が、俺の心をこんなにズタズタのめった刺しにするなんて。

 苦しくて。

 心を今すぐ捨てたいくらい、痛苦しくて。

 現実から逃げ出したいと強く願った俺。


「彼女さんって言われちゃったよぉ。やっぱりそう見えちゃうのかなぁ」


 ルンルン声で再び俺の腕にしがみついた苺の腕を、俺は拒絶反応通りに振り払った。


「綾くん?」


「いちご、マジ無理」


「え?」


「お前の脅し、もう付き合っていられない」


「そんな態度とるなら今からSNSに載せちゃうよ。綾星くんの本性」


「お前もアイドルならさ、明日のライブぶち壊すようなことすんな。ライブ終わってからなら好きにすれば」


「ちょ……ちょっと……」


 もう、苺の言いなりになるのはうんざりだ。

 俺は苺の顔なんて見ないまま、自分の家に向かって駆け出した。



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