ドロ痛な恋が甘すぎて
合同ライブ
☆綾星side☆


　次の日。

　
　苦しくて、苦しくてたまんない。


　リハーサルも終わり、１時間後にはアミュレットとフルフルフルーツの合同ライブが始まる。

　それなのに俺は、楽屋の鏡台の前の椅子に座り身動きが取れないでいる。

　昨日の夜、ほのかの口から発せられた『結婚』という言葉。

　これからの人生、ほのかの隣で微笑む相手は俺じゃない。

　優しさの塊みたいなあの御曹司。


　似合いすぎ。

　おっとりした性格のほのかと大人優しい御曹司は、相性良すぎ。

　自分の本性すらファンにさらけ出せなでいる情けない俺が、あいつに勝てるわけがない。


　心の痛みをごまかすよう、俺は体中の空気を吐き出した。

　でも、今朝のいちごの態度を思い出し、救われたように笑いがこぼれる。


　今日の朝いち、顔を合わせた時、苺が俺を思いっきり睨みつけてきた。

　実は苺もプロ意識が高いらしい。

　他人の前やリハ中はいつも通りに俺に接してきた。

　そして二人のデュエットリハの時に、ドスのきいた低い声で吐き捨てられた。


『綾くんの本性を暴露する気、失せたから。だから綾くんも黙ってて。私の本性も実はドロドロで醜い悪魔だって』

　俺と同類かよ？と言い返したら、腹にひじ打ちを食らわせてきやがった。


　俺の目は、いつも何を見てるんだろうな。

　ほのかのことも。

　春輝のことも。

　苺のことも。


　真実を見ているようで、全く見えていない。

　俺って……マジで情けねぇ。
　
　
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