ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
「おい、春……」
「あやあやは、絶対に歌っちゃダメなの!!」
「は?」
「ステージで歌ったら……ほののんの歌じゃなくなっちゃうから……」
春輝は俺に言葉をぶつけながら、大粒の涙をこぼしている。
どういう意味?
ステージで歌ったって、俺がほのかへの想いを詰め込んだ歌だってことは、変わらないはずだろーが。
「意味わかんねぇ」
「本当にわかんない? 僕が言ってる事」
「さっぱりな」
「絶対に後悔するって言ってるの!」
「直前で進行変えてスタッフ困らせる方が、よっぽど後悔する」
「あやあやは贅沢なんだよ!!」
怒り球を俺にぶつけるように、声を荒らげた春輝。
「贅沢って。またそれかよ!」
「僕とマー君が……どれだけ……」
タタタと床を蹴る激しい音が聞こえだした。
俺が気づいた時には、血相を変えたマトイが春輝の腕を掴んでいた。
「春!! これ以上言うな!!」
「だって……マー君……」
「春の言いたいことはわかったから。俺がわかっていればそれでいいだろ?」
「でも……あやあやに……」
マトイが春輝の瞳をじっと見つめている。
穏やかで、春輝を心配しているのがはっきりとわかる瞳で。
春輝は吐き出したい気持ちを押し込めるかのよう、唇を必死に噛みしめていた。
そしてヒックヒックと肩を揺らしながら、辛そうな声を出した。
「あやあや……ごめん……」
「……おう」
「本番10分前には絶対に戻るから……それまで僕のこと……放っておいて……」
力のない瞳を泳がせながら、春輝はふらふらと楽屋から出て行った。