ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
「あら、蒼吾くんじゃない?」
「あ……こんばんは」
いつもと違う、蒼吾さんの余裕の消えた笑み。
必死に笑顔を作っているようにも見える。
蒼吾さん、いきなりどうしちゃったの?
ご婦人はお弁当が入った袋を手に、とびきりの笑顔で私たちの方に駆けよってきた。
「もう蒼吾くん、久しぶりなんだから」
「ご無沙汰しています」
「お家に遊びに来てって言ったでしょ」
「なかなか時間が作れなくて」
「美香にも言ってちょうだい、たまには二人で顔出してって」
「……はい」
美香?
誰だろう?
ご婦人の嬉しそうな笑い声が、幸せに漬かりきっていた私の心を
なぜか不安にさせる。
でも大丈夫。
つないだ手をほどかれたけれど、きっと大丈夫。
だって蒼吾さんが言ってくれたから。
愛おしい人を見つめるような瞳で、伝えてくれたから。
『俺と結婚してください』って。
大好きな人を信じたい。
心の底から信じたいのに。
隣で苦しそうに顔をゆがめる蒼吾さんに違和感をおぼえ、不安が雪崩のように迫ってきた。