ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

　ほのかの幻影で、頭が埋め尽くされていた俺。


「綾星く～ん！！」

「こっち向いて！！」


　四方八方から俺を呼ぶピンク色の声にハッとなる。

　毎週のアミュレットライブの倍以上のお客さんの目が、俺に集中している。


　ここはショッピングモール。

　室内ステージに立つ俺の目の前には、俺色のブルーを身につけたファンの子達がわんさか。

　吹き抜けをたどるように、視線を上にずら。

　２階３階にもなんとか俺を見ようと、小さな隙間から顔をのぞかせる人でぎっしり。

　これもみんな、春輝とほのかのおかげだな。


　実は俺、レイジ役が決まりました。イェイ！

　って。

　こんな簡単な説明じゃ、意味わかんないか。


　女子高生に絶大な人気のマンガ

　『ドロ甘な声が痛すぎて』

　通称『ドロ痛』が２時間ドラマになる。


　レイジ役のオーディションがあるよって春輝に言われて。

　俺がレイジ役を射止めたら、ほのかが俺のことを好きになってくれるかも。

　微かな期待を抱いてしまい。

　オーディションを受けに東京まで行って。

　レイジに半分乗っ取られながら、ほのかへのラブソングを歌ったら……

　本当に選ばれてしまいました。

　レイジ役、ドラマの主役に。

　しかもエンディング曲に、俺の作ったラブソングを使ってくれるらしい。


　よかったぁ。

　小１から芝居の練習を積んどいて。


　今日は『ドロ痛』のマンガの最終巻の発売記念イベント。

　レイジ役の俺のトークショーと、マンガを買ってくれた人限定のサイン会。