ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目

 いつものライブ以上の緊張感と、こんな大勢の視線を集めたゾクゾク感が、俺の顔に悪魔スマイルを作り出している。

 司会者は百目(ひゃくめ)桃華(ももか)さん。 

 この人は、県内で大人気のフリーアナウンサー。

 雅の彼女、明梨(あかり)ちゃんのお母さんなんだけど。

 司会の桃華さんが、会場のお客さんに向かっておどけ声を出した。


「ここに集まったみんな綾星くんのファン? うんうんって。私のファンは誰ひとりいないわけ?」


 その声に会場中が笑いのトルネード。

 桃華さんも大好き!という声に、ありがとう!と満面の笑みで答える桃華さん。

 お客さんを笑わせるトーク。

 さすがだなって感心する。


 最近の俺は、自分の本性を暴露した。

 いま桃華さんから、その話題でイジられているところ。


「綾星くんはアミュレットの中で、誰が一番いじりやすいの?」


「間違いなく(みやび)ですね」


「やっぱり」


「あいつ俺がイジメると、狭くて暗い場所に逃げ込んじゃうんです。猫か?って突っ込んじゃうんですけど、かわいい奴でしょ?」


 桃華さんは悪魔綾星について、細かいところまでネチネチ突いてくる。

 そのたびにお客さんが、どっかんどっかん笑ってくれて。

 お客さんの笑顔が俺の瞳にしみこむたびに、安心する。

 こんな上から目線で攻撃的な俺を、ファンの子達も受け入れてくれたんだって。


「あらら、もうトーク終了の時間じゃない?」


 がっかり声の桃華さんに、お客さんからも『嫌~~!!』の嵐。
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