ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
ちょっと待って。
とろけたようにしゃがみ込まないで。
まだまだ100人以上、待ってくれているお客さんがいるから。
時間内に裁かなきゃいけないから。
「囁きボイス、レイジ君でお願いします」
「貴公子綾星くんで」
「悪魔モードの綾星くんがいいです」
いろんなリクエストに応えながら、サイン会をこなしていると
「最後の一人です」
スタッフが俺に手を振った。
どれくらいの時間、サインを書いていた?
手首が『働かせすぎ!もうムリ!』って訴えているんですけど。
ま、次の人で終わりだし、最後の人はどんな俺をリクエストしてくるかな?
これで終わりという開放感から、心が羽のように軽くなった。
この吹き抜けの天井まで飛んでいきそうなほど、爽快さわやか。
な~んてニヤケていたのに。
「私のこと……覚えてますか……?」
俺の耳が捉えた声が、俺の体の筋肉を一瞬で硬直させた。
え?
この声……
もしかして……