ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目


「すっげー、会いたかった」


 驚いたように目を見開いたほのか。

 きっとほのかは、レイジっぽいドロ甘でとろけるような言葉の方が嬉しいよな。


 でもごめん。

 レイジとしてじゃなくて、綾星としてほのかに接したいから。


 机の前で固まってしまったほのかに、スタッフが駆け寄ってきた。


「そろそろサイン会が終了となります。ステージ下にお願いします」


 その言葉に、うつむいたままコクリと頷いたほのか。


 ステージ下に目を向けると、たくさんのファンの子たちが俺を見つめている。

 これ以上ほのかのことは引き留められない。
 

 なんで会いに来てくれた?

 今から御曹司の所に帰るつもり?

 聞きたいことは山のようにあるけど、ほのかはステージを下りていく。


 俺にとって奇跡みたいな、ご褒美みたいな、たった1、2分の出来事。


 この奇跡をつなぎとめる方法、誰か教えて欲しい。

 今すぐに。



 ステージ下から聞こえたファンの子の『綾星く~ん!』という声。

 その声に笑顔を向けたほんの数秒のうちに、ほのかの姿はたくさんのファンの子たちに紛れて消えていた。
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