ドロ痛な恋が甘すぎて アミュ恋2曲目
「ほのかちゃん、何か買いに来てくれたの?」
親父のルンルン声に、ほのかの肩がビクリと飛び跳ねた。
バカ!
ほのかって名前で呼ぶなよ!
真ん丸な瞳をこれでもかって見開いて、ビックリしてるじゃん。
ほのかはニコニコ顔の親父から瞳を逸らし、弱々しい声を発した。
「オムライス……ください……」
「は~い。今から作るからちょっと待っててね」
でも次の瞬間、慌てるように顔の前で両手を振りだしたほのか。
「あっ、やっぱり今日はいいです。ごめんなさい。本当にごめんなさいっ」
ほのかは親父に向かって思いっきり頭を下げると、店の出口に向かって体をひねった。
ヤバい、帰っちゃう。
それでいいわけ?
いいわけないよな。
ほのかのこと……
帰したくないし……
頭の中に素直な声が響いた時には、すでに俺はほのかのところまで走り、手首をギュッと掴んでいた。
「あっ、綾星くん?」
「お前さ、どっちのオムライスが食べたいわけ?」
「……え?」
「親父が作っるのと俺の、ねぇどっち?」
親父の目の前。
大好きな子の手首を思いっきり掴んだまま、すっげー恥ずかしいことを口走っていると、自分でもわかっている。
わかっているから余計に、二人に聞こえてんじゃないかって心配になるほど、俺の心臓が激しく飛び跳ねている。
「ほのかちゃん、俺のオムライスだよね?」
人気俳優並みの顔面偏差値の親父が、大抵の女が落ちる紳士的スマイルをほのかに飛ばした。
息子の好きな女に向ける笑顔じゃねーだろ?
親父にイライラしながら、ほのかに目を向ける。
その時、震えている桃色の唇が、はっきりと意志を宿した。