ドロ痛な恋が甘すぎて

 今日もまた同じ時間に店に入るドアの前に立ち、腕時計に文句タラタラな俺。

 まだなのか?

 あとちょっと。

 早く時計の針よ動け。

 待ちきれない。

 時計の針を急かすように、つま先で床をトントン叩く。


 5・4・3・2・1

 ゼロになった瞬間、俺はドアを開け店に飛び込んだ。

 蛍の光が流れる店内を、ねんのためキョロキョロ見回す。


 大丈夫、お客は誰もいない。

 俺はいつものようになんの迷いも持たず、ほのかを思いっきり抱きしめた。


「やっと俺だけのものになった」


「ちょっちょっと……綾星くん……」


「俺に抱きしめられるの、嫌なわけ?」


「嫌じゃないけど……ここじゃ……恥ずかしい……」


「俺は平気、ほのかしか目に入ってないし」


美紅(みく)さんたちに見られちゃうから……」と言いながらも、俺の腕の中にすっぽり収まるほのか。


 母さんたちに見られても全然気にならない。

 ほのかが俺の腕の中にいてくれるという幸せで、他はどうでもよくなってしまう。

 癒されるわ、マジで。


 でもまぁ、昔の俺なら恥ずかしすぎて川に身投げしていたかもな。

 女の子を抱きしめているところなんか、親に見られたら。

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