ドロ痛な恋が甘すぎて

「もう8時だ。行くぞ、俺の部屋」


「でも割りばしが、まだ……」


「そんなの親父にやらせるから」


「待って、それはちょっと……」


「は?」


「だって嫌われたくないもん。綾星くんのお父さんにも、お母さんにも」


 そんなことで、ほのかのこと嫌うわけねないじゃん。

 仕事が丁寧でお客さんからも評判がいいって、母さんもべた褒めだし。


 「客……?」


 俺の頭に浮かんだNGワードに、勝手に自滅。


 あ……また来やがった。
 
 ザワザワと醜い感情が。

 ほのかの笑顔、たとえ客でも見せたくないんだよな。

 
 ここ最近、ほのか目当ての大学生や仕事帰りのスーツ男が増えてきた気がする。


『ほのかちゃんの笑顔、癒されるよ』

 そう言いながら、弁当を買っていく常連客もいるし。


 あぁ、そいつらに見せつけたい!

 お揃いのシャーベットブルーの雫のネックレスをぶら下げて、後ろからほのかのことをガバっと抱きしめてるところを。


『ほのかは俺の物』って釘指したい。ぶっとい釘を。威嚇目的で。

 でも残念ながら、そんなことはできないんだ。
 
 ほのかと付き合ってることは絶対にバレるな!と、マネージャーに念を押されているから。
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